建具用金物について
「メーカーのカタログを見て選んだのに、うまく合わない」
というご相談は、決して珍しくありません。
カタログは金物選定の重要な資料ですが、
カタログ通り=必ず問題なく使えるとは限らないのが実情です。
ここでは、カタログ選定で起こりやすいズレや見落としポイントを整理します。
Q. カタログ通りに選んだのに、なぜ合わないことがあるのですか?
A. カタログは「前提条件」が揃っている場合の情報だからです。
メーカーのカタログは、
一定の条件を満たしていることを前提に作られています。
その前提と、実際の建具・現場条件が一致していない場合、
「寸法は合っているのに使えない」
という状況が起こります。
1. カタログは「理想状態」を前提にしている
カタログに掲載されている情報は、多くの場合、
- 建具がまっすぐである
- 枠が正確に施工されている
- 想定通りの材質・構造である
といった理想的な状態を前提にしています。
実際の現場では、
- 建具の反り
- 枠の歪み
- 経年による変形
などがあり、カタログ条件とズレていることがあります。
2. 寸法条件だけを見て選んでしまっている
カタログでは、
- 建具厚
- 有効寸法
- 取付寸法
といった数値が分かりやすく記載されています。
そのため、寸法だけを見て判断してしまいがちですが、
実際には次のような要素も影響します。
- 可動域
- 動作ストローク
- 金物同士の干渉
寸法上は合っていても、
動かしたときに問題が出ることがあります。
3. 使用条件がカタログ想定と違っている
カタログには、
- 想定用途
- 使用頻度
- 推奨環境
が設定されています。
たとえば、
- 住宅用想定の金物を店舗で使用する
- 低頻度想定の金物を頻繁に開閉する
- 想定荷重と違った建具で使用する
といった場合、
カタログ上は問題なくても、実際の使用には合わないことがあります。
4. 建具側の加工精度・状態の影響
カタログでは、
- 掘り込み位置
- 加工寸法
が正確に出ていることを前提としています。
しかし実際には、
- 加工が浅い・深い
- 位置がわずかにズレている
- 過去の補修で形状が変わっている
といったケースも多く、
その結果、金物が正しく収まらないことがあります。
5. 仕様変更や世代違いが影響することもある
同じ型番・シリーズ名でも、
- 仕様変更
- 製造時期の違い
によって、細かな形状や動作が異なることがあります。
図面上寸法が同じであっても、金型が違うなどすると微妙な違いが出ることがあります。
カタログ情報が最新であっても、現場の金物が旧仕様である場合、合わないケースがあります。
6. カタログに載っていない判断ポイントがある
実務では、次のような点も確認します。
- 金物同士の相性
- 組み合わせたときの動作感
- 長期使用での耐久性
これらは、カタログだけでは判断しにくい情報です。
まとめ
カタログは金物選定の大切な資料ですが、
- 理想条件を前提としている
- 実際の建具や使用環境までは反映できない
という性質があります。
そのため、
「カタログ通りに選んだのに合わない」
ということが起こり得ます。
カタログ情報に加えて、
現物の状態・使用条件・動作前提をあわせて確認することが、
選定ミスを防ぐポイントです。
追記:現場での調整という選択肢
カタログ通りに合わない場合でも、
多少の不一致であれば、現場で調整して金物を納められるケースもあります。
たとえば、
- 木部を埋めて加工する
- ビスの締め具合で微調整する
- 必要に応じて補強を入れる
など、職人の経験によって対応できる方法はいくつもあります。
このような調整は、
カタログや図面には載っていない判断であり、
実際の建具の状態を見たうえで行われます。
「どうしても少し合わない」
「このまま使えるか判断がつかない」
と感じた場合は、無理に自己判断せず、職人に任せるのもひとつの選択です。
現場での工夫によって、
安全性や使い勝手を損なわずに納められることも少なくありません。




